愛され系男子のあざとい誘惑
「あの、お風呂ありがとうございました」

「そんなにかしこまらなくていいんだよ。今日から優美ちゃんの好きにしてくれていいんだから」


ニコニコと微笑みながらいう社長の言葉にさっきからなんか不思議な違和感があった。私のものとか、私の好きにしていいとか。


「こっち、おいでよ。そんなところに突っ立ってないで。抱きしめさせて」


「えっ?!いやでも私、あの・・・」


「優美ちゃんが来てくれないなら、俺から行くよ」


社長はソファから立ち上がり、立ち尽くす私をぎゅっと抱きしめた。やっぱり私は頭の中がパニックでアワアワとしていた。でも、ドクンドクンと社長の心音が聞こえてきて、顔を上げた。


「・・・ドキドキしてるんですか?私なんかに」


「何言ってるの。俺、こんなの初めてだよ。正直に言うけど、初恋かもしれないな」


「は、初恋?!」


「俺、自分から女の子追いかけたのも初めてだし、振り回されて感情がおかしくなりそうだったのも初めてだよ。突然いなくなったと思ったらすごく綺麗になって現れるし、一夜限りじゃ嫌だなんて言われたんだからどうしようかと思ったよ」


社長が私を抱きしめたままいう言葉に、自分が大胆なことをしたんだなと改めて実感した。普段なら絶対にできなかった。


京香が背中を押してくれたから。京香のおかげで私は社長に会いに行くことができた。
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