愛され系男子のあざとい誘惑
『でも、俺今すごく幸せなんだよ。このビルだからこそ、少しの空き時間にエレベーターに乗れば優美ちゃんに会いに来られる。夜は前は帰らない日もあったけれど1時間でも2時間でも優美ちゃんの隣で眠れる。それだけで満たされるんだ』

ヒロさんが私の頭を撫でながらそう言ってくれたことがあった。もしかしたら彼はどこかで『社長』という責任を下ろす場所が欲しかったのかもしれない。


そんな重大な役目を私ができているのかはわからないけれど、もしそうなら私は私といるときだけは『社長』ではなく、『藤澤寛人』さんとして接しようと思った。


「ただいまー!」

「あっ、お帰りなさい。お疲れ様でした」

彼の家の隣の部屋はお姉さんである舞さんが住んでいて、最近はなかなか一緒にご飯を食べることのできないヒロさんに代わって私の話し相手になって一緒にご飯を食べてくれる。


最初は怖い人かと思っていたけれど、それはヒロさんに合うかどうかを見極めるために試していたからと謝られて、それからはすっかり仲良くしてもらっている。


「優美ちゃん、今日の昼ご飯はなーに?」

「今日はきのこたっぷりのクリームパスタです」

「いいね、美味しそう」
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