愛され系男子のあざとい誘惑
そう言ってダイニングテーブルに腰を下ろし、ポチッとテレビをつけた舞さん。最初はヒロさんの言うとおり、私とヒロさんのことがよく取り上げられていたし、あることないこと書かれたりしたのでテレビは見るなと言われていた。


だけど人の噂なんて次のターゲットが見つかればあっさりと鞍替えするもので、今日のトップニュースは人気芸能人の不倫疑惑だった。


「くだらないわねー。こんなの何が楽しいんだか。ねえヒロ昨日帰ってきた?」


「はい。夜中の3時くらいだったんですが、帰ってきて朝方の7時くらいまで寝て、出られました」


ヒロさんは最近夜中には帰って来て、必ずここから職場に向かうようになった。だから必ず毎日一回は彼に会える。それが嬉しかった。


「できましたよー」


舞さんから連絡をもらっていたので茹で上がったパスタをソースに絡めて、食器棚から二つお皿を取り出し取り分けて舞さんの前と自分が座る場所にお皿を置いた。


私が初めてここにきたときモデルルームだと思ったのは、ヒロさんがほとんどここにある家具を使わなかったから。


『俺、帰ってきてもベッドで寝るだけだから本当なら狭いワンルームでよかったんだよね。昔から狭いところ好きだったし、一人の秘密基地とかつくってた』


『狭いところが好きだったんですか?』


『うん。うち結構昔ながらの家だったからよく姉貴と押入れ入ったりしてたよ。でもそう思えばその頃から俺って変わってないのかも』


『変わってない?』


『そう。大切なものは秘密基地に隠して、自分だけのものにするんだ』
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