スパダリ副社長の溺愛がとまりません!
「えっ?」

亮平さんはア然として、言葉が続いていない。

「身勝手だと思うだろう? 会社の都合で、きみたちふたりを振り回した。だけど、本当に大事なのは娘の幸せだった……」

「ですが、社長。僕たちは、別々の人生を歩むことで、心の整理をつけてきました」

「そうだよな……。亮平くんを今さら望むことは、虫がいいと思っている。だが、萌はまるできみが忘れられないでいた。橘社長にもお願いする。考えてもらえないか?」

亮平さんは、きっと拒んでくれる。そう期待していたのに、返事をしない彼に、私の心はズキズキと痛み始めた。

「今夜は、これで帰らせてもらう。本当にすまなかったね。仕事で近くに来ていて良かったよ」

浅井社長はぎこちない笑みを見せると、萌さんを抱えて車に戻っていった。亮平さんはそんな社長に、ずっと頭を下げていた。

亮平さんはどうして、社長のお願いを断ってくれなかったの……?

それは迷っているから? すぐに断ることができないくらいに、まだ萌さんに特別な感情があるの?

今、少しでも私が亮平さんの心のなかにいる?
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