スパダリ副社長の溺愛がとまりません!
と、冗談交じりに言うと、部長は照れくさそうな笑みを見せた。

部長には、五年ほど付き合っている彼女がいることを知っているから、もしかして……と思って言ってみたら図星だったらしい。

「そう言う広瀬だって、目を輝かせてるじゃないか」

「ふふ……。実は、学生の頃にテレビで見てから憧れなんですよ。でも、彼氏もいないんじゃ、いつ叶うか……」

画面をクリックしながら、橘不動産の会社概要を眺める。会社名こそ知っていたけれど、詳しいことは知らなかったから。

「あれ? 筆頭株主のひとりって、橘トラストホールディングスの副社長なんですね?」

リンク先を巡っていると、いつの間にかサイトを抜け出していて、いろいろな企業の情報が載っている場所へ辿り着いた。

そこには、企業の株主が記載されていて、橘不動産の筆頭株主のひとりに、『橘亮平(りょうへい)』という名前がある。

「みたいだな。社長じゃなくて、息子の副社長の方なのか。だからなんだな」

部長はふんふんと、ひとり納得している。だけど、私にはその意味が分からなくて問いかけた。

「だからって、なにがですか?」

「ああ、広瀬には言ってなかったよな。実は、今回のダイニングバーの設計の打ち合わせなんだけど、橘副社長も同席されるらしくてさ」

「えっ⁉︎ そ、そうなんですか?」

橘副社長といえば、グループ企業の親である橘トラストホールディングスの副社長だ。

父である橘社長が、経済界のドンと呼ばれるほど影響力がある人。

そんな人の息子で、さらにイケメンエリートとして有名な副社長が同伴だなんて、緊張するにもほどがある。
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