スパダリ副社長の溺愛がとまりません!
三十二階にあるレストランは、街が一望できる場所として、人気があると部長が教えてくれた。

モノトーンの店内は、入った瞬間から一八〇度広がる窓が目に飛び込んできて、部長の言葉をすぐに理解できた。

「こちらでございます」

約束より三十分早いけれど、クライアントを待たせるわけにはいかない。それは常に、私たちが実践していることだった。

案内された個室に入ると、長方形のガラステーブルの他に、ソファーやローテーブルもあり、ゆっくり過ごせる雰囲気になっている。

私たちは先に下座に座ると、副社長たちの到着を待つ。その間、部長と打ち合わせ内容の最終確認をしていると、店員さんのノックする音が聞こえた。

さすがの部長も少し緊張気味に立ち上がる。それにつられるように、私も立ち上がってドアに向き直った。

最初に入ってきたのが橘副社長だと分かったのは、とにかく目を引くイケメンさんだったからだ。

私の記憶より、ずっと整った顔をしている。キレイな二重の目に、スッと上がった眉。

そして通った鼻筋と適度な厚みの唇で、色気のある甘いルックスだ。

栗色の髪は毛先をラフに散らしていて、垢抜けた雰囲気を出している。

上質なダークグレーのスーツを品よく着こなし、ふわりと柑橘系のコロンの匂いもした。

「初めまして。橘亮平です」

一八〇センチはありそうな長身の副社長は、私たちに小さな笑顔をみせた。

「初めまして、稲田設計事務所の原田と申します」

「インテリアコーディネートを担当させていただく広瀬です」

名刺交換をこんなに緊張したのは、新人のとき以来だ。橘不動産の社長も同伴し、挨拶を済ませた私たちは、さっそく打ち合わせに入る。

細かな店舗設計は、原田部長の担当だ。私は、店内の内装を社長や副社長と決めていくのだけど……。

「店舗設計は、社長が責任者になるので、原田さんは社長と打ち合わせをしてもらえますか?」

橘副社長の指示に、部長は「分かりました」と返事をしている。不動産の社長は五十代の恰幅のいい男性で、人柄の良さそうな人だった。

ふたりはテーブルで広げたノートパソコンを覗き込み、さっそく打ち合わせに入っている。

「じゃあ、俺は広瀬さんとだな。会話がしにくいから、あっちで話そう」

と、橘副社長が指差したのは、ソファーだった。
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