君の声が、僕を呼ぶまで
「桜子、あーけーてー」

ドアをノックする音がする。

「桜子、あーけーてー」

私は自分の部屋の中で黙っている。

「桜子、あーーけーー」

あぁ、もう!

ガチャ・・・


「やっと開けてくれた」

シュークリームとお茶が乗ったトレイを持って、雪兄ぃが立っていた。

私はそれを奪うように受け取り、

「ありがと、じゃ」

と言う。


「えぇ、そんだけ? 部屋に入れてよ」

「何で。早くあっち行って」

「でも、閉め出せないよね」

私の両手がトレイで塞がっているのを見て、ニヤニヤ笑う。


そのまま、私の身体ごと、自分の身体を部屋へ押し込み、後ろ手でドアを閉めた。
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