君の声が、僕を呼ぶまで
今日の放課後。

沙羅と一緒に、小春に会いに保健室へ向かった。

山崎先輩を迎えに来た冬島先輩と、偶然にも途中で会った。

…沙羅を見て嬉しそうに笑う冬島先輩を、私は直視出来なくて、自分がうまく笑えていたか分からない。


だけど、笑顔が消えたのは、私ではなかった。

笑顔が消えたなんて、生易しいものでもなかった。



「本当は喋れるくせに、もう何年も喋ってないなんて、ほんと気持ち悪い」



保健室のドアを開けようとした時、聞こえてきた、声。


誰が、誰に向かって、どんな意味を込めて、どんな意図で言ったのか、理解するよりも早く。

その声は、言葉は、無邪気の中に邪気を孕んでいるような、とても重たく冷たく、そして酷く痛く聞こえた。
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