君の声が、僕を呼ぶまで
「【アキ】は、小春の事、好きなの?」

【サクラ】が唐突に聞いた。

「……うん」


「小春は、頑張ろうとしてるよ。今朝は、震えながらも教室の前まで一緒に来れた。それだけでも小春にとっては、すごく頑張ってるんだと思う」


…知らなかった。

「味方は1人でも多い方がいいに決まってる。それが、現実では関わってきてなかったとしても、ずっとあの空間で一緒にいた人なら、心強いと思うよ」

「…僕なんかが…?」

「ねぇ、小春のためにも、沙羅のためにも、自分自身のためにも、逃げずに一緒に頑張ろうよ」


「…【サクラ】」

「桜子、だよ。智秋」

「ありがとう、桜子…僕、【サラ】のためにも…」

「サラ沙羅でややこしいし、小春って呼んであげたら、きっと喜ぶと思うよ」

桜子は、くるっと振り返って、校舎の方へと歩いて行く。


――「小春」

いつか、呼べるかな。

――「智秋」
…いつか、呼んでくれるかな。
< 310 / 389 >

この作品をシェア

pagetop