君の声が、僕を呼ぶまで

●朝の世界と、夕陽の世界

「気を付けていってらっしゃい」

お母さんが言う。

「小春、頑張れ」

サラがほっぺにチュウをしながら言う。

「行こっか」

桜子ちゃんが言う。


毎朝、桜子ちゃんが家まで迎えに来てくれる。

「今日、1限目から体育かぁ。小春、体操服持ってきた?」

私は、体操服の入ったバッグを、桜子ちゃんに見せた。


「マラソンは得意?」

首を横に振る。

「同じだね」

桜子ちゃんは、ふふって笑った。

私も、少しだけ、下を向いて笑った。


一歩空けて、半歩前。

桜子ちゃんは、その距離を保って歩く。

「中間が終わったと思ったら、あっという間に期末が来そう」

んーっと伸びをしながら言う。

「あ、小春、見て。飛行機雲」

桜子ちゃんが指差す方の空を仰ぐ。


梅雨の合間の青い青い空に、一筋の白い飛行機雲。

「今日は夕焼けも綺麗だろうね」

桜子ちゃんがまた笑ったので、私もまた笑った。

今度は空を見上げながら。
< 311 / 389 >

この作品をシェア

pagetop