君の声が、僕を呼ぶまで
「さ、あとはよろしくね。ちゃんとおもてなししてちょうだい」

そう言って、お母さんは一階へ戻って行った。


薄いピンクが基調の部屋。

本当に薄くって、ほとんど白に近い。


勉強机の上には、新品同様の教科書。

まだ一学期の終わり近くだというのに、僕の教科書は手垢や折り目が多くって。

きっと小春も、本当は、教科書はインテリアじゃないって、机に向かう度に思ってるんじゃないかな。


白いカーテンが、揺れる。

夕陽は更に傾いて、空は橙と紺色のグラデーションになってきている。

窓辺に置かれた、ベッド。

その上に、ちょこんと、いた。


黒い毛艶、琥珀色の目。

「初めまして、サラ」

僕が挨拶をすると、彼は「ニャー」と返事をした。


ベッドに座るサラの真正面に、正座で座る僕。

やっぱり落ち着かない。

そんな僕を、琥珀の目でジーっと見つめるサラ。


「…本当に、猫なんだね…」

僕は、サラを見て呟く。
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