君の声が、僕を呼ぶまで
桜子はこう言った。

「小春は猫を飼ってるの。サラっていう名前の黒いオス猫」

「【サラ】ってハンドルネームは、そこから?」

「だと思うよ」

それだけ、小春にとって【サラ】は大事なんだろう。


「あれ、でも何で、オス猫なのに、そんな女の子みたいな名前…?」

僕が首を傾げると。

「それは、私からは教えてあげない」

桜子が、またちょっと意地悪そうに笑った。


「…もしかして秘密ってそれ…?」

「ううん、違うよ。【サラ】はね…」



「…本当に、君だけが小春と会話出来るの?」

目の前にいるサラに改めて問う。

「ニャー」


…ダメだ、僕にサラの言葉は分からない。

…同じように、サラにも、僕の言葉は分からないんだろうか。


「サラ、僕は、小春の力になりたいんだ」

それでも、僕はサラに語り掛ける。
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