絶望の空の色

約束をする度にドタキャン。
また約束をしても、キャンセル。
時にはデート中にも呼び出されたことがあった。
その度に背中を押してくれたけど、本当は嫌な思いをさせていたんだと思い知る。

お客様にとったらおそらく『一生に一度』の晴れ舞台のつもりなのだ。
入念に、何度でも事前に確認したいのだろうし、もちろんこちらとしてもビジネスとはいえ出来うることをしてあげたい。

お客様だって仕事もあれば予定もある。
自分たちが主役だといっても、必ずしもしなくてはいけないと言うわけではなく。
お客様からしたら、あくまでも結婚式は仕事ではなくて。
ぶっちゃけ式などあげなくても婚姻関係は結べるのだ。
そんな中でうちでわざわざ式を挙げたいと思ってくれたなら、叶えてあげたいとおもうじゃないか。
無理難題を吹っ掛けられても、予定外の下見だ相談だがあったとしても。
お客様は“自分のペース”で生活していて、それによって変動する私のシフトなんて関係なくて。
相手方の言い分を想像するとしたら多分、これだ。

『それがおたくらの仕事だろう?』

間違いないのだ、それは。
お客様ありきで成り立っているのだから。

呼ばれたらいくしかないじゃないか。
頼りにしてるなどと言われたら、断ることなどできなかったじゃないか。

仕事は生活のために、生活はあなたと生きるために。

どれだけの言い訳を並べたところで恭平くんを蔑ろにしてしまったのは他でもない私なのだ。
誰よりも一番大切にしなければいけない人だったのに。
せめて言葉で伝えることができたはずなのに。
けれどもう、今さらだ。

頬を伝う涙が現実を伝える。
“今さら思ったって仕方がない”ことだ、と。


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