絶望の空の色





あれから、季節は巡った今は、2017年2月吉日。
私にとっての今日までで一番の“大仕事”といえる日だ。

「本日はお忙しい中……」

会場に集まっている着飾った人々の注目の的になっているのは日野恭平、その人だ。
私はその光景を壁際から見ている。

小さい頃や学生の頃は、たった1年2年で人は変わったものだけれど、大人になってからの1年2年というのは流れる時間は同じはずなのに緩やかになっているのか、さほど変わりはなかった。
恭平くんはやや緊張した面持ちでスピーチをしているけれど、その瞳には迷いがない。
グレーのタキシードがよく似合っている。
胸には紫の薔薇のブートニア。
主役二人の脇には同じ花をあしらったラウンドのブーケがある。
可愛らしい雰囲気の新婦さんの為のそれは可愛らしく仕上がっていた。
恭平くんが求めていたのがそれだったのならば、私はやはり彼には相応しくなかったんだろう。

二人を見つめながらも私は会場全体に気を配らせて滞りなく式が運ぶように勤めなければならない。
それが私の仕事で、プライドだから。

『俺と仕事、どっちが大切なわけ?』

あの日投げ掛けられた言葉は、深く私の胸に刺さり、長く私を蝕んだ。
あなたは知らないでしょうけど。
何年経っても、子供が“親には叶わない”と思うように、自分自身に思うのだ。
“あの頃は若かった”と。
よくも悪くも、若い頃にはきっと勢いがあったし、すべてに全力だった。
仕事にも、恋にも。
あなたがすべて、とまではいかなくても、成績がぐらつく程度には、全力だった。


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