絶望の空の色

人には二つのタイプがあるらしくて、失恋したらメキメキ仕事の調子が上がる人と、不安定になる人がいるらしい。
私はどうやら後者だったらしく、一心不乱に仕事に打ち込んでも空回りをするばかりで入社してから右肩上がりだった成績は停滞どころか下降して、ついには異動という形でずっと働いていた式場を移った。
栄転とは程遠い、けれど、さすがにそれには奮起しないわけにはいかなくて、成績が落ちてしまったことへの追求や仕事への向き相方を見直した。
心機一転というでもないけれど、私には仕事しかない、なんていう投げやりな心持ちで向かうのではなくて、改めて、どうしてこの業界に足を踏み入れたのかを考えた。

恭平くんを忘れたかった訳じゃない。
かといって、ずっと好きでいたかった訳じゃない。
そこに居ない人を思い続けるのは気力がいる。
けれども忘れようと躍起になるほどに、執着心は増してしまってがんじからめになっていた。
場所が変わったことですんなり受け入れられたわけではないけれど、自分自身を見直すには十分だった。
仕事への向き合い方が変わると小さなことの一つ一つが変わっていって、乱れがちになっていた生活も落ち着いたものになった。
例えば、休日の服ひとつ、毎日の食事ひとつをとっても、丁寧に生きようと思った。
服ひとつ、食事ひとつと簡単にいってしまうけれど、人の生きる基盤となるもので、それを正すことでまた仕事にも張りが出てきて、忘れようなんて思わなくなっていた。

「最近、変わったね?」

同僚から声をかけられて私は微笑む。
恭平くんのお陰で変われたとかは思わないけれど、あなたの存在は確かに“今の私”を作るために必要な存在だった。
あのね、恭平くん。
あなたのことが大好きでした。

ようやく新しい場所にも馴染んで、少しずつ調子を取り戻していた私の前に、ある日一組のカップルが式場見学にやって来た。


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