小倉ひとつ。
ちょっとした小物は、控えめだけれど何かとおしゃれ。


丁寧なものの扱いや、よく使い込まれているらしく鈍い艶を持つ鞄から、物持ちがいいのだと伺える。


私はあんまり男性ブランドは分からないけれど、上質なのは見れば分かる。


ボタンひとつ取ったって、色合いが素敵だったり、組み合わせがおしゃれだったりする。


ぱっと見て分かるくらいに素敵なものを、瀧川さんは使っている。


楽しみは稲やのたい焼きを食べることです、なんてささやかすぎることを以前言っていたから、散財癖もないのだろう。


少し生真面目かもしれないけれど、不真面目よりよほどいい。


——イケメンで真面目で誠実で、穏やかで優しいお金持ち。


なんという人か。それは狙われるに決まっている。


実に爽やかな神々しいお顔を拝見しつつ、いまだに微妙な気まずさを引きずる瀧川さんに、私はへらりと笑った。


「瀧川さん、とってもかっこいいですからね。かっこいいな、素敵だなって思って、多分、女性はついつい構いたくなっちゃうんですよ」


瀧川さんはひどく素敵な人だ。


目に見えて素敵なら、恋をする人も多いだろう。


若干近寄りがたいほどの美しさの瀧川さんに頻繁に話しかける女性はきっと、その大半が恋をしている。


好きな人ならば、それは構いたくなるに違いなかった。
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