小倉ひとつ。
たい焼きをのんびり食べたことも相まって、話し込んだせいばかりでなく、外がもう暗かった。


街灯や街の明かりでそんなに暗く見えないけれど、十八時過ぎだから、何も街灯がないところなら星が綺麗に見えてしまいそうなくらい真っ暗だ。


残しておいてもらった領収書を元に、ささっと精算する。


ぴったり半分出そうと思っていくらか小銭も用意していたのだけれど、お抹茶すごく嬉しかったです、と端数と何割かを除いたお値段に収めていただいてしまった。優しい。


「立花さん、今日はありがとうございました。楽しかったです」


お金を受け取った瀧川さんが、お財布にしまいながら微笑む。


「普段いろいろとお心配りをいただいているので、少しでもお礼ができたらと思ってお誘いしたんですが。むしろ、こちらが大変素敵な時間を過ごさせていただいて」

「いえいえ! こちらこそ、ありがとうございました。私もとっても楽しかったです」

「最寄り駅は南でしたよね?」

「南です。でも今日は、ちょっぴり寄り道して帰ろうかなあなんて思っているので……」


多分送るって言おうとしてくれたんだと思うけれど、泣く泣く辞退する。なんてもったいないことを。


瀧川さんと帰れるなら、やっぱり今日はちゃんと帰った方がいい気がしてきてしまうあたり、現金な思考。
< 224 / 420 >

この作品をシェア

pagetop