私のご主人様Ⅱ
「行くぞ」
「いってらっしゃーい」
門の向こう側に車が止まると、季龍さんは歩き出す。
車はいつか見た高級車じゃなくて、普通の車だった。
奏多さんと暁くんに手を振って、季龍の後を追いかけると、先に乗り込んだ季龍さんに引っ張り込まれて後部座席に並ぶ。
あれ、こういうのって私は助手席に乗るべきでは?
悩むタイミングが遅くて、すでに扉は閉じてしまったのでどうにもできない。
「んじゃ、出発しまーす」
運転手は伸洋さん。早速車は動き出して、景色が移り変わっていく様子に、窓の外を眺めた。
今さらだけど、外に出るなんてあの逃げ出した時以来だ。あの時は焦っていて、景色なんてほとんど覚えていない。
始めてみる景色みたいだ。
ぼんやり外を見ていると、急に目を塞がれた。