私のご主人様Ⅱ
『…気にしなくていいよ。すぐに帰るから』
初老の男性までそんな口添えをする。
えぇ…。そりゃないよ。さぁどうしようと思ったけど、ふとある可能性が頭をよぎる。
もしかして…。
『こちらでいれることも可能ですが、よろしかったですか?』
『…それは、豆を挽くところからと言っても可能かい?』
『はい。もちろん』
『…では、お願いしようかな』
豆を挽くってことは、コーヒーだ。
深々と頭を下げ、部屋を出る。
やっぱり当たりだ。たまにいるお客様で、飲み物や食事に一切手をつけようとしないタイプ。
それは、中に何が入っているか分からないから。もし毒なんかを入れられていたらまずいからと、手をつけない。
だから、そのようなお客様には全て目の前で、手元を隠すようなことをせずに用意する。
飲めと言われれば飲む。それが毒なんてないと証明することになるから。