旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~



「け、けどっ……」



それでもなお、まだ瑠奈が言葉を続けようとした、その時。コンコン、とドアをノックする音が響く。



「失礼します」



檜山はそう言ってドアを開け顔を見せた。



「お客様がいらっしゃってます」

「ちょっと!今玲央くんとは瑠奈が話してるんだけど!?」

「いえ、立花社長ではなく……あなたさまに」



俺じゃなくて、瑠奈に客……?

檜山の言葉に俺と瑠奈が首をかしげると、檜山の後ろからは小太りの中年男性が姿を見せた。



「瑠奈!!お前やっぱり玲央くんのところにいたんだな!」



それは幼い頃から何度も顔を合わせている母方の伯父……そう、瑠奈の父親だ。

伯父は瑠奈を見ると、細い目をつりあげて怒りをあらわにした。



「パ、パパ!?なんでここにっ……」

「お前が帰国早々いなくなったって聞いたから、どうせ玲央くんのところだろうと来てみたんだ!ったく、明日からまたアジア公演があるというのに……」



まさか父親が迎えにくるとは思わなかったのだろう。驚く瑠奈に、伯父は瑠奈の襟を後ろからつまんで引っ張り歩き出す。



「やだー!瑠奈は玲央くんといるのー!」

「なに言ってるんだ!玲央くんだって忙しいんだぞ!しかも玲央くんには結婚相手がいるとよそで聞いたばかりだろう!それにお前のような世間知らず、恥ずかしくてまだ嫁に出せるわけもないだろう!」



瑠奈は抵抗するものの、「わかったら行くぞ!飛行機の時間だ!」と力ずくで連れて行く父親に敵わず、結局ズルズルと引きずられて行った。



伯父さんはわりと普通の感覚の人なんだけどなぁ……瑠奈の家は母親が瑠奈に甘くてワガママになったというか。

とにもかくにもこの場はひと安心だ。瑠奈が去り一気に静かになった室内で、俺は安堵のため息をひとつ吐いた。



< 200 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop