長い夜には手をとって


 ただ家を共有するということと、同棲するってことは全く違うのではないでしょうか!?今は自分のことだけしてればいいけれど、弘平と一緒に住むってなると、それはやっぱり―――――――――

「俺のことはナギがよく知ってるじゃないか。俺だってお前のことは全部知ってる。今度は傷つけないよ。必要なら結婚したっていい。だけど、それはナギが俺に惚れ直してくれてからでないと。順番はお前、気にするだろ?」

 私は文字通り、仰天して声が裏返った。

「はっ!?けけっ、結婚!?」

 何だってーっ!?驚いて仰け反り、もう無理ってほどに座席に体を押し付けた。

「まあゆくゆくは。もうお互いにいい歳だし、俺はそれだけ真剣だってこと」

 弘平は運転席に身を預けて、私をじっと見ている。

 まとめようとしたけれど、すればするほど私の頭は混乱するようだ。

 弘平が同棲を言ってきてて、私はお金に困らなくなって、でも綾が戻ってくるときにあそこにいないと、それに伊織君が・・・伊織君のことは。綾が、結婚、いや、それは菊池さんのことで―――――――じゃなくて、あれっ!?

 冷や汗がダラダラ出る。まるで揺れの激しい船の上にいるようだ。ぐるぐる回る。私は一度目を閉じて、深呼吸をした。

 ダメだ~っ!!わからないわからないわからない~!!

 だから、私は決めた。今は全速力で現実に戻ろうって。

 緊張と混乱のあまりの吐き気を抑えて、私は言った。

「あの・・・」

「ん?」

「・・・とにかく、送ってくれない?」


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