長い夜には手をとって


 彼は工務店と話しあってそうしてくれたけれど、二階だけは広い寝室が欲しいからと間取りを変更した。

「やっぱ、一緒に寝たいじゃん。広いベッドがいるでしょ、そこで凪子さんと色んなことしようと思うとさー」

 そんなことを言って私をからかう。

 恋愛感情が淡白だーなんていってたのはどこの誰でしたっけ?と思うくらいに、夜の伊織君は情熱的なのだ。私は工務店の人の前で彼を叩くわけにもいかず、真っ赤な顔で横を向いていたのだった。

 夏が終わって秋がきて、綾が失踪してから一年が経った。

 相変わらず私達はバタバタとした都会の夫婦をしていて、たまに一緒になれる休日は家にこもって二人で過ごす。そうやって、また来た寒い季節を心地よく過ごそうと努力していた。

 伊織君が初めてここへ来た日。それから、同居生活が始まった日。同じ日付が過ぎるたび、私はカレンダーの前でぼうっとしてしまうのだ。

 思い出して。

 去年の、様々なことを。

 秋に無事に挙式をした菊池さんは堀川さんと名前をかえ、まだ同じ銀行で派遣仲間として働いている。その彼女からの情報で、弘平も付き合う女性が出来たらしいよ、と聞いた時には喜んだ。

 今度はちゃんと彼と合う人だったらいいなと思って。上昇志向で俺様の彼を喜んで支えることが出来る人ならいいな、って。心から思った。

 1月が過ぎ、2月が来て、また春の訪れを待ち遠しく思う頃、日曜日の夕方に、玄関のチャイムが鳴った。

「ん?誰か来た」


< 207 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop