【coat.】
「ほんとすっごい偶然。でも、鏡見てよく私だってわかったね」
「まぁね」
少しはにかむようなその表情に、胸がきゅんっと狭くなる。
鏡を見て私だと気付いてくれたのも、かなり嬉しかった。
「知り合い誰もいなくて、休み時間とか寂しかったんだよね」
「あ、私も。一人でご飯とかして、かなり孤独だったよ」
お互い、苦笑しか出ない状況だった。
こんな遠い塾に、ひとりでも知り合いがいただけで奇跡的だ。