甘くて苦い恋をした
翌朝、目を覚ますと、テーブルの上にメモが一枚置かれていた。
ズキズキ痛む頭を押さえながら、メモを手に取った。
“カギはポストに入れておく 遅刻するなよ 加瀬”
えっ!?
あれって、夢じゃなかったの!?
一気に目が覚めた。
やだ、私…
加瀬さんにキスせがんじゃったんだ!
それで、結局…
した…よね キス
それも、結構濃厚なやつを…
昨夜の激しいキスを思い出し、途端に顔が熱くなる。
うわっ…
どうしよう 私…
けれど、色々考えている暇もない…。
マズい
会社に遅刻する!
私は急いで着替えを済まし、バタバタと家を出た。
***
「おはようございます…」
二日酔いで走ったから、体調は最悪だ。
「おはよう 沙耶ちゃん 二日酔い辛そうだね… まあ、あれだけ飲めば無理もないか」
結城さんがパソコンに向かいながら、そう言った。
「すいません ご迷惑おかけしまた… お店の記憶もあまりなくて…」
「あー 店では殆ど眠ってたよ」
「ホントですか!?」
結城さんの言葉に少しホッとする。
記憶をなくすほど飲んだのなんて初めてで…
皆の前で、どんな醜態を晒したのかと気が気じゃなかったのだ。
いや…
加瀬さんには、十分晒しちゃったか…
ふと、加瀬さんの方を見るとパチッと目が合った。
びっくりして、私は思わず顔を伏せた。
「そうそう 朝から一件、タカフジのオーナーとの打ち合わせが入ってるんだけど、体調の方は大丈夫そう?」
結城さんが私の顔を覗き込んだ。
「えっ あっ もちろん 大丈夫です!」
「そう じゃあ、準備できたら言ってね」
「はい」
心臓がドキドキして、その後は、加瀬さんの方を見れなかった。