甘くて苦い恋をした
「うっ 気持ち悪い!」
こみ上げてくるような苦しさで目を覚ますと、そこはタクシーの中だった。
「すいません 運転手さん ちょっと止めて下さい!」
そんな声が聞こえて、私はタクシーの外へと連れ出された。
「高本 吐いていいよ…」
耳元で加瀬さんの声がした。
きっと、私の背中を擦っているのも加瀬さんなのだろう…
それ以外のことは分からない。
次の瞬間、私は思い切り戻してしまった。
「うっ ううっ」
「よし 吐いちゃえ 少し楽になるから…」
「う…」
「ほら、これで口ゆすげ…」
口元にペットボトルが差し出された。
そして、いつの間にかまたタクシーに乗せられ、次に気づいた時は、私のマンションの前だった。
「高本 歩けるか?」
私はコクリと頷いて、加瀬さんの肩に掴まった。
エレベーターを降りて玄関の前にたどり着くと、加瀬さんが私のバックをあさり始めた。
カギを探してるのかなあと、ぼんやり思った。
「高本 カギはポストに入れておくな。メモに書いておいたから見ろよ?」
私を部屋のベッドへと寝かせた後、加瀬さんが私に声をかけた。
その瞬間、帰っちゃうんだなあと無償に悲しくなった。
「嫌です… 帰らないで下さい」
夢か現実かも分からないまま、私はベッドから身を起こし加瀬さんの胸にしがみついた。
「高本……」
「帰らないで… お願い」
きっと、これは夢なのだろう
それならば、せめて、夢の中だけでも…
「キス… して下さい」
「沙耶…」
掠れた声のあと、唇に暖かいものが触れた。
「ん…んっ」
「沙耶… 口開けて…」
「あっ… んっ」
加瀬さんの舌が私の舌を追いまわす。
きもちいい…
ふわふわとした感覚の中で、次第にキスが深まっていくのを感じた。