俺様社長と付箋紙文通?!
オーナーかつ勤務先であるB.C. square TOKYOのビルからヘリで東京郊外の自宅にもどる。夜のとばりがおりて、なんて気障な言葉を親父が言ったせいだろう。ヘリから見える夜景が今日は一段ときれいに見えた。冬に近づいている証拠だ。畑や住宅が広がるのどかな地域に自宅はある。しばらく前に親父が買い取った古い洋館を少々改造して、俺と親父の妹、つまりは叔母と住んでいる。60を過ぎて元気な叔母は趣味に旅行にと出かけているが、俺の食事だけは用意してくれる。ダイニングテーブルの上にはラップのかけられた生姜焼きが乗っていた。それを平らげる。
イタリアの老舗家具店シリックでそろえられた家具はバブル時代に買いあさったものだろう。バブル成金が郊外の別荘として建てた洋館らしい。バブルがはじけて破産し、それを地元の零細不動産が買い取った。その不動産屋も首が回らなくなって、親父のもとに転がり込んだ物件だった。成享大を卒業して親父の背中について仕事を始めたころだったから覚えている。倒産寸前で青白い顔をしていた夫婦、その後ろで涙ぐんでいた少女。親父は大切に使わせてもらうと洋館を家具まるごと引き取った。
バロック調の大理石のテーブル、ふんだんに生地を使った椅子。木目美しい食器棚、天井には豪華なシャンデリア。洋館というよりは城だ。きらびやかなドレスを着た女が縦ロールの髪を揺らして舞踏会でも開きそうな雰囲気だ。
モールを解いて紙袋からドーナツを取り出す。このうずまきドーナツを食うのは何回目だろう。これが俺の夜食に定着した。
手元のスタンプカードに目を落とす。1センチ四方のマス目にぐるぐる台風の模様が8つほど押されている。100分の15、か。今日はいちご生地、いちごチョコ、ドライラズベリーだ。ぺろぺろキャンディをかじる要領でドーナツをほおばる。パリッとしたチョコの触感とシャカっと音のするドライラズベリーの粒が歯をくすぐる。そのとたんに口の中ではいちごとラズベリーの香りと酸味が広がった。あとから追いかけてくるのチョコの甘みと、ドーナツ生地のほろっと感。噛んでいるうちに小麦の豊潤な味がのどを通る。
これも絶品だ。うまい。
イタリアの老舗家具店シリックでそろえられた家具はバブル時代に買いあさったものだろう。バブル成金が郊外の別荘として建てた洋館らしい。バブルがはじけて破産し、それを地元の零細不動産が買い取った。その不動産屋も首が回らなくなって、親父のもとに転がり込んだ物件だった。成享大を卒業して親父の背中について仕事を始めたころだったから覚えている。倒産寸前で青白い顔をしていた夫婦、その後ろで涙ぐんでいた少女。親父は大切に使わせてもらうと洋館を家具まるごと引き取った。
バロック調の大理石のテーブル、ふんだんに生地を使った椅子。木目美しい食器棚、天井には豪華なシャンデリア。洋館というよりは城だ。きらびやかなドレスを着た女が縦ロールの髪を揺らして舞踏会でも開きそうな雰囲気だ。
モールを解いて紙袋からドーナツを取り出す。このうずまきドーナツを食うのは何回目だろう。これが俺の夜食に定着した。
手元のスタンプカードに目を落とす。1センチ四方のマス目にぐるぐる台風の模様が8つほど押されている。100分の15、か。今日はいちご生地、いちごチョコ、ドライラズベリーだ。ぺろぺろキャンディをかじる要領でドーナツをほおばる。パリッとしたチョコの触感とシャカっと音のするドライラズベリーの粒が歯をくすぐる。そのとたんに口の中ではいちごとラズベリーの香りと酸味が広がった。あとから追いかけてくるのチョコの甘みと、ドーナツ生地のほろっと感。噛んでいるうちに小麦の豊潤な味がのどを通る。
これも絶品だ。うまい。