俺様社長と付箋紙文通?!
その計算された宮下の後ろについて俺はオフィスを出た。まったくもって面倒くさい。まあ、いい。どうせ2階まで下がるなら1階も同じだ。エントランスパークにいってドーナツ販売カーとやらを冷やかしてこようか、とたくらんだ。アッパーフロア専用エレベーターと下界直通エレベーターを乗り継いで2階にやってきた。

1杯1000円もするコーヒーだが、行列は絶えないと聞いてはいたが。それにしても。

今日もすごいことになっている。16時という時間が余計にそうさせているのかはわからないが、気取ったOLたちがずらりと2列縦隊で立っていた。きれいに着飾った女ばかりだが、どこか品に欠ける。


「席はあるのか?」
「はい。奥のテーブル席にご用意してあります」
「ん」


俺と宮下は行列の脇をすり抜けて店内に入った。並んでいた奴らがじろじろとこちらを見る。

壁側は全面ガラス張りの開放感のあるフロア、100もあるテーブルは満席だ。黒を基調にした店内にイメージカラーのスカイブルーが指し色にはいる。ブルーのマグ、看板、テーブルPOP、紙ナプキン。見た目は大人の洗練された空間といった雰囲気だが、しかし騒々しい。客層は7割が女性、あちこちで下品な高笑いが起きている。軽い商談や面談ができるようにと誘致したコーヒーショップだが、これでは目的に適ってはいない。ほとぼりが冷めたら半個室のある名古屋式喫茶店チェーンを誘致するか。

歩きながら窓をみやる。眼下に広がるエントランスパークは中央に大きな円形広場がある。淡いグレーの石畳に浮かぶようにあちこちに花壇をおき、けやきなどの広葉樹もバランスよく植え、このビル街のオアシスとして貴重な存在だ。その中に赤い屋根の軽ワゴン車があった。妙にマッチしている。まるで南欧の街角を思い起こさせるような光景だ。

思わず足を止めた。


「設楽社長、席は奥です」
「いや、奥ではこの景色は見えんだろう。エントランスパークが映る席で取材を受ける。ここをあけろ」
「はい、かしこまりました」


宮下はカウンターの奥にいた店長を呼びつけ、窓側のこの席を至急あけるように伝えた。店長は俺がこのビルのオーナーだと知ると、へこへこと頭を下げた。それから宮下は奥の席にいる取材班に話を通しに行った。



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