社長の甘い罠~いつしか当たり前に~ + 番外編

知らされる現実

「健人、今はいい。だが、結婚は別だ。」


「親父、俺は………。」


「健人は三男だが、二ノ宮グループを守る義務はある。結婚は二ノ宮を守る為の義務だ。」


「…………。」


「女遊びはそろそろ終わりにしなさい。真剣に結婚を考えなさい。」


「遊びじゃない。」


「小鳥遊(たかなし)百合さんだ。T&Tコーポレーションのお嬢様だ。目を通しておきなさい。」



社長室から聞こえてきた会話に動きが固まる。



「長嶺さん?」



背後からの声に大きく体を揺らした。振り返れば、長谷川さんが私を見つめている。



「長嶺さん?」



二度目の問い掛けに我に返った。



「あっ、えっと、社長を呼びに。もうすぐ進捗会議なので。」



社長室の扉が僅かに開いており、そこから中の話声が聞こえていた。



「長谷川?長嶺?」



社長室から社長の声が聞こえてきた。私は頭を下げてその場を立ち去った。
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