傍観者-RED ROAD-
 頭が割れるような酷い頭痛で目が覚めた。
「気分最悪………」
 ベッドに横たわったまま悪態をつき、天井を睨み付ける。寝起きが悪いのは何時もの事で文句を言ったところで状況が変わる訳ではないけれど、ほぼ毎日のように続く寝起きの頭痛には流石にそんな理屈も吹っ飛んで仕舞う。
(やる気出ねぇ………)
 鉛をかせられたかのように重い体で寝返りを打つ。体中が怠くてなかなか起きる気にならない。と言っても、これも今に始まった訳じゃないし、気力が無いのは頭痛の所為でも体の怠さの所為でもなかった。
「…………」
 ゆっくり目を上げて、壁のフックに掛けてある制服に何気に視線を向けた。
 上質な生地を使った真っ白なシャツ。同じく白のスカーフリボンの結び目を固定させるピンには、小さな赤い本物の宝石が埋め込まれている。そして紫のAラインのオーバースカート。そのスカートと、同色のジャケットには、左胸に金糸の筆記体で名前が縫われている。
 これが、河柳(かわやなぎ)学園高等部・春夏用の制服だ。選りすぐりの高級素材を使った制服でかなり人気が高いらしいけど(なんたって宝石を使ってるくらいだし)私にとっては囚人服も同然だった。
 学校が嫌いという訳ではない。しかしかと言って好きでもない。敢えて言うなら『どうでもいい』だ。
『どっちでもない』ではない。『どうでもいい』。私にとって『学校』とは、その位置付けをするに程の関心は無い場所。
 毎日続く、螺旋の一部。
 呼吸の付属の欠陥品。
 何時か消えて無くなる塵。
 毎日の営みの一部ではなく、生きる事の一部ではなく、息をする事の一部でもなく。只『行く』から『行く』、それだけの話。
(いい加減起きないとな………)
 ぼうっとする頭を覚醒させようと、前髪をかき上げる。と同時にキッチンから私を呼ぶ声がした。起きてくるのが遅いので、起きているかの確認のモーニングコールだ。
 今起きる、と返事を返してようやく体を起こす。酷い頭痛は相変わらずで、おまけに動かす度に体中が痛む。痛くないところが無いという程痛い。体中から軋む音が聞こえてくるかと思う程だ。全く、私の身体年齢は一体何歳だ。
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