送り主のない手紙
てがみがひとつ、とどきました

おてがみ




かたん

マンションのエントランスに、錆びれた音が響く。


201と書かれた小さな郵便受けは白い塗料が剥がれ、茶色く変色した鉄が所々見えていた。

壁に一式並ぶ他の家の郵便受けもどれも同じようなもので。オートロックが完備されたエントランスに廃れた一角は、正直浮いていた。それでも直されないのは、例えどれだけ見栄えが悪かろうと誰も注視しないからだろう。


今や新聞さえもインターネットで閲覧する時代だ。もちろん手紙さえ受け入れることがなくなったのだから、道具としての利用価値はほぼゼロに近い。


冷たい蓋を占めると、またかたんと寂しい音が鳴った。


誰も見向きもしないそれを毎日確認する私は、ただの癖だった。


人から忘れ去られどんどん錆びれてもそこにあるしか出来ない郵便受けを、私は可哀想だと思っていた。



そんな私は自分でも少し気狂いだと思う。




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