物語はどこまでも!

『良かったね、聖霊さん』

『聖霊さんは報われたようで』

『もう夜泣きしない子が戻ってきて』

ここまで来る間に、その考えに何度も行き着いたけど、覚えがないからこそ有り得ないと結果を求めなかったんだ。

けれど今なら、断言出来る。

「私は、彼と出会っていた」

図書館のスタッフとして本に『訪問』するよりも、ずっと前に。

思い出せないほど昔にきっと出会っていて。

「忘れてしまっても大切な思い出だったんだ」

部屋の片隅に置いてある『たからばこ』。
その中にある一枚の紙切れ。それがなぜ、この中に混じっているのは今もまだ思い出せない。

“だからこそ”、試してみるんだ。

埋もれてしまった記憶。きっとそれは掘り起こせないけど、大切だと自覚しているから。


「彼との出会いは大切なことばかりだから」


忘れてしまっても、捨てられずにいた。

羽根のしおりと、一枚の紙を抱く。

「お願い、おねがい……っ!」

深く目を閉じ、祈る。
どうか連れて行ってほしいと懇願し、そうして。


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