君と、ゆびきり
ほどなくして中学の入学式が無事に終了し、続けて高校の入学式が始まった。


「なにこれ、もう中学卒業したことになってるの?」


「細かいことはいいから、ね?」


そう言い、今度はあたしが校長役をやらされた。


生徒は風1人。


風は背筋をピンと伸ばして真っ直ぐにあたしを見ている。


あたしは夢の中で見た真っ黒な顔をした風を思い出していた。


あの夢は、あたしの中から風の記憶がどんどん抜け落ちてしまっている事を知らせる夢だったのかもしれない。


今度は忘れない。


どれだけ環境が変化しても、抗えない未来だろうとも、今度こそ、変えてみせるから。


「千里」


高校の入学式も終わった時、風が立ち上がった。


あたしと同じくらいの身長の風。


こうして対峙すると嫌でも視線がぶつかる。
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