君と、ゆびきり
「風は大人だね」


玲子が感心したようにそう言った


風は得意げに笑って見せる。


「人は忘れながらじゃないと生きられない生き物だからね」


「あたしは忘れないよ」


あたしは風の車いすを押しながらそう言った。


「千里?」


あたしの声色が真剣だったからか、玲子が驚いたようにあたしを見た。


「あたしは忘れない。風の事を、もう二度と忘れない」


それは誓いの言葉だった。


151回目にしてようやくたどり着いたこの場所を、あたしはもう絶対に手放したりしないと。


「ありがとう、千里」


顔は見えなかったけれど、風はそう言い、楽しそうな笑い声を立てたのだった。
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