君と、ゆびきり
悪化
3人で入学式を経験した後、風はすぐに病院へ戻った。


慣れない場所での、慣れない長話にすっかり疲れ切ってしまったようだった。


「すぐにお見舞いに行くから」


あたしは風とそう約束をして、家に帰った。


入学直後には親睦を深めるための宿泊合宿などがあり、のんびりしている時間なんてなかった。


特にあたしが今回選択した看護科の授業は難しく、勉強についていくだけでも精いっぱいだったのだ。


それでも、あたしは約束通り毎日のように病院へ向かった。


風はあたしを見るたびに「今は忙しい時期なんだから、来なくていいのに」と、頬を膨らませた。


あたしに負担をかけていると思っているのかもしれない。


だけどあたしはかまわなかった。


風は入学式以来学校を休んでいる。


風がいるはずの机はいつも空席で、風の名前すら覚えていないクラスメートたちは沢山いた。
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