拾われた猫。Ⅱ


「分かりましたよ…、僕の負け」


呆れたように笑って、チラリと私に向く。

そしてすぐ、トシの方を向く。



「その代わり、その子と近藤さんの一番近くは僕がつきますよ」

「勝手にしろ。

そして早くしろ」



出口から一番遠い位置に陣を置く。


人数からすれば薄っぺらいけど、絶対に破らせない。


ギロリと赤木を睨むが、余裕の笑みが返ってくる。


もう勝ちを確信しているのか、腹立たしい。



「変な動きしたら斬っちゃうからね」


後ろで物騒な声が聞こえたけど、美華さんの事だからそんな風にはならないだろう。

一度や二度会ったくらいの仲で、どうしてか謎の確信があった。



自分でもおかしいと思うけど、そんな事は考えてられない。



「もう体は大丈夫なのか?」


足音が目前までする時、そっと問いかけてきたのは佐之だった。


久しぶりにまじまじと彼の顔を見た。


首を縦に振ると、安堵したように笑い、くしゃりと頭を撫でられた。


< 289 / 305 >

この作品をシェア

pagetop