イジワル社長は溺愛旦那様!?
そして澄川は、営業マンらしいビシッとした礼で、夕妃に頭を下げると、
「また明日から普通に同僚として接してね」
と、おどけたように笑ってチェーロの中に戻っていった。
(澄川さん……)
「はぁ……」
深々とため息をついたところで、
「――大丈夫ですか」
と、どこからともなく声がした。
「えっ?」
ドアは開いていない。周囲を見回すと、
「ここです、ここ」
ひょっこりと、路地裏から洋平が姿を現した。
「えっ!?」
いったいどこから出てきたのだろう。夕妃が目を丸くすると、
「そこのドアがキッチンに繋がっているんですよ」
と、後ろを振り返った。
「もしかして見ていてくれたの?」
「じゃないと朝陽が心配して飛び出していきそうだったから」
おそらく澄川が酔っていたせいだろう。実際はなんということもなかったのだが、苦笑する洋平に、夕妃も苦笑いをしつつ、うなずいた。
「すみません」
「いえ……朝陽、出てきますよ」
彼の言葉通り、それから間もなくして朝陽が夕妃の荷物を持ってドアから出てきた。