イジワル社長は溺愛旦那様!?

夕妃は握られた手をそっと外しながら、頭を下げる。


「すみません……一緒にいたのは私の弟です。弟には見えないかもしれませんが、まだ高校生なんです」
「えっ、弟? そうなんだ……なんだ、本当に弟さんがいたんだ、そうなんだ……」


澄川がちょっと驚いたようにつぶやく。


「さすがに早まったかな……」


自嘲する澄川だが、夕妃は申し訳なさで複雑な気持ちになった。

結婚してると大っぴらに言えたなら、澄川は告白すらしてこなかったし、そもそも恋愛対象にしなかっただろう。
もしくは、せめて恋人がいるという雰囲気で振舞っていたのなら、違ったかもしれない。

だがなにもかも“たられば”の今さらだ。

結局今は、こんなふうにしか言えない自分がもどかしく、夕妃は顔をあげられない。


「本当にごめんなさい」


すると澄川は、はーっと息を吐いて、「いや、こちらこそごめんね」と、謝罪の言葉を口にした。どうやら夕妃の返事を聞いて、一気に酔いが冷めたらしい。


「そもそも三谷さんに恋人がいるとかいないとか、そういうのすら確認しないで焦っちゃってさ……てかこんなんじゃ断られるに決まってるよね……そもそもまったく手ごたえなかったし。いや、ほんとごめん……ごめんなさいっ」



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