イジワル社長は溺愛旦那様!?

それから数日後――。

誘われていたことなどすっかり忘れていた夕妃の前に、また桜庭がやってきた。

ちょうどお昼休みが始まったばかりで、みな出払っていた。
いつもお弁当の夕妃は、お留守番もかねて事務所にひとりだった。

営業から戻ってきた桜庭に気づいて、夕妃は箸を置き、「お疲れ様です」と声をかける。

すると桜庭はゆっくりと周囲をみまわしたあと、

「もうちょっと、カジュアルなところにしたから」

と、夕妃に向かって言い放った。


「え?」
「レストラン、予約したから」


ゆっくりと、言い聞かせるように桜庭がそういう。


「緊張するって言ってただろ?」
「あ……」


確かにバスチアンに誘われたとき、そういうところは緊張するので、と断った。そう言ったほうが角が立たないと思ったのだ。


「今日、仕事終わったら行くからね」


そして桜庭は、夕妃からサッと目を逸らし、また事務所を出て行ってしまった。


(どうしよう……)


モデルの穴埋めに誘われたのに、断ったら、新しく日程を設定されてしまった。
今回は誰かの穴埋めではないと言うことなのだろうか。
そんなはずはないと思うが、まったくわからない。


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