イジワル社長は溺愛旦那様!?

湊とは年が離れているので、夕妃はあまり子供っぽいと思われないよう常日頃気を付けていた。


「でも、適度なジェラシーは、恋のスパイスだよ」


始は目を細めて笑い、そして給仕が運んできたコーヒーを口元に運んだ。


「適度なジェラシー……」
「――ってかさ、俺、ゆうちゃんと湊がどんな風に出会って、こういうことになったのか、教えてほしいなぁ。それとも誰にも話せない、ふたりだけの内緒の話?」


始の好奇心に満ちた瞳が、キラキラと輝く。

けれど不思議と下世話な感じがしない。


「いえ、そういうわけではないです。知っている人もいるし……それに山邑さんなら大丈夫ですよね」
「もちろん、言いふらしたりなんかしないよ」


夕妃はコーヒーをひとくちすすって、それから目の前の始を見つめた。


「湊さんと出会ったのは今年の春……私、逃げていたんです」
「――逃げていた?」


想像もしていなかったらしい出だしに、始の茶色い目が大きく見開かれた――。






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