イジワル社長は溺愛旦那様!?
それから夕妃はいくつかの診察を受けた。
声が出ないことに病名がついたのは、すでに日が暮れかけたころだった。
「発声器官に異常はありません。脳に障害もないことは検査済みです。おそらく失声症でしょう。女性がかかることが多く、いわゆる脳の障害による失語症とは違います」
精神科の女医の言葉に、夕妃は目を丸くした。
隣に座っていた朝陽も、息をのむ。
「それって……治るんですか」
「過度なストレス、そして強いショックが原因です。服薬やカウンセリングが効果的ですから、根気よく治療しましょう」
この状況でそれを言われると、夕妃の心臓が跳ねる。
だがそれは弟も同じだった。
自分の起こした行動が姉から声を奪ったのだと、思っている。
「ストレス……」
朝陽が思いつめたように口をつぐむ。
それを見て、夕妃は朝陽の膝に手を伸ばした。
(朝陽くん、自分のせいだって思ってる?)
朝陽はハッとして顔をあげたが、無言の夕妃を見てまた悲しそうな顔になった。
その顔を見て、夕妃は“いつものように”気にしなくていいと言いたいけれど、言葉が出ない。