チューリップ




「梨華。」



まだ静まらない教室にリュウの声が響く。


ふとリュウを見るとリュウの目がまっすぐに私に向いていた。



「俺帰るから。
ごめん。」


「あ…リュウ!」



リュウは私の返事を聞かずに鞄を手にとって教室を出ていった。





リュウ

ごめんって何?


何で謝るの?





「梨華ちゃん、俺も行っていい?」



陽介君も立ち上がって怖いくらいに強い目をして私を見る。


だんだんクラスの子達も私達の様子に気づいたみたいで、教室は不穏な雰囲気が漂い始めた。



どうして…?


なんでこんな風になっちゃうの?



またバラバラになっちゃうよ…。




「梨華!

もう、前とは違うでしょ?」




陽介君に返答できずにいる私に、菜々子ちゃんが静かな声で言った。



私は2人に交互に目を向ける。

陽介君や菜々子ちゃんだって動揺してるはずなのに、しっかりとした眼差しで私を見ていた。




「陽介君、リュウをお願い。

菜々子ちゃんありがとう。」



私がしっかりしなくちゃいけないだ。



リュウの父親を
岩城先生を
探していた時点で、2人を再会させようとしていたんだから。




私はこのクラスの

リュウの

担任なんだから。






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