Be Girl-翼のゆくえ-
自分の母親がそうであったように、私はそういう男からお金を貰って、その代わりに体を使って満足させる。

ただそれだけ。それ以上でも以下でもない。

気持ちの中でそれは苦痛でしかなかったけれど、自分の体は自分を守るための商売道具だと、いつの頃からか思い始めていた。

男が女に支払う金の見返りは、体でしか無いはずだ。

しかも、テレクラという単純明快な性のやり取りが行われている場所で出会った2人、なお更の事。

それにも関わらず、カズオはナナミに一切手を出す事なく、ただナナミの寝顔をぼんやりと見ているだけだったのだ。

「そんなに見ないでください…」

ナナミはこうして男に見つめられるのは初めてだったので、必要以上に照れながら言った。

「ご、ごめんごめん。見つめられてたら眠れないよね。疲れているみたいだし、今日はゆっくり休んでね。僕は帰ります。これ、今日のお金」

そう言ってナナミに3万円を差し出した。
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