Be Girl-翼のゆくえ-
カズオはナナミが泣き止むまで、何も喋らずじっとナナミの顔を見つめていた。

細い一重の瞼がほとんど開いていないような状態まで目を細め、優しい表情で。

「少しは楽になったかな?」

泣きやんで俯いているナナミにカズオは声をかけた。

ナナミの反応が無いのを見て、カズオは言葉を続けた。

「僕の話をしてもいいかな?実は僕、施設で育ったんだ。だから両親の顔を見たことが無いんだ」

そんな事を、楽しかった思い出を回想するかのように、カズオは話し始める。

優しい表情と、優しい口調で。

「昔はね。両親を恨んだ事もあった。どうして自分だけこんな目に遭わなきゃいけないんだとか、そんな事ばかり考えて生きてきた。自分の事を特別な人間だと思いすぎてたんだ」

カズオはそこまで話して、目を開き、ナナミを真っ直ぐに見つめた。
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