溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
社長室のフロアに着くと、先に待っていた社長に小走りで駆け寄った。
「呼び出して申し訳ない」
「いえ。どのようなご相談でしょうか」
「桃園さんのところからまた取材依頼が入った時に推してほしい商品一覧と、今後の質疑応答で俺が答えたい、もしくは答えられる範囲の質疑の一覧を更新したから渡します」
「ご丁寧にありがとうございます」
これくらいなら明日でもいいし、メールで送ってくれても良かったんじゃないかと思える。呼び出して相談されるようなことではない。
「それと……ちょっと待ってて」
一面が硝子に覆われた空中庭園のような社長室フロア。
ドアを開けて社長室内へ戻った彼は、まるで夕闇の中に飛び込んでいったように見えた。
「お待たせ。これなんだけど、千夏ちゃんもらってくれないかと思って」
社長の手にちょこんと乗ってやってきたのは、キラキラと輝く鳥の置物だ。
「とても高価そうですね」
「値段は気にしないでいいんだ。秘書にお土産で買ってきたんだけど、鳥が苦手でさ」
「4人全員ですか?」
そう、と残念そうに眉尻を下げられた挙句、社長の手に乗っていると宝石のようで躊躇う。