溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~


「待って」

 ドアを目前にしたところで、彼に引き止められた。

 振り返ると、息もできないほどの距離にいて目眩がする。ヒールの足元は安定を失って、背中をドアに預けた。



「本当は、俺に会いに来てくれた?」


 図星を指されて戸惑う私と、存在感だけで逃げ場を封じる彼。

 圧倒的に劣勢なのに、どうにかして気持ちが知られないように必死になる。



「今度の土曜、迎えに行くから、予定空けて」

「予定なら、空いてますけど……なんで」

「そんな難しい顔しないでよ。俺が会いたいだけだから、嫌なら断ってくれていい」


 社長がわからない。私を好いていないなら、こんなことをしないでほしい。

 思わせぶりな言動を悪趣味だと冷めた目でやり過ごせていたのは、もう過去の私だから。



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