溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「千夏、ランチは?」
「まだ行けそうにないから、今日はパス」
近くを通りかかったという乃利子が、広報部までやってきてデスクを覗き込む。
「ほぅ……これが噂の不死鳥ね」
「不死鳥じゃなくて、ただの南国の鳥だと思うよ」
「社内では、不死鳥って呼ばれてるの知らない?塩対応のクールな広報・白埜さんのデスクに不死鳥降臨!ってさ」
「みんな暇なのね」
周りの評価なんて、飽きるまでが賞味期限だ。次に何か面白い標的が現れたら、大した興味も持たれなくなる。
「相変わらず、うちの社長は大人気だね」
「そうみたいだけど、どこがいいのか私にはさっぱり」
「千夏が無反応でいられるほうが変わってるよ」
ランキングが載っている誌面と新しい原稿を見た彼女は、私を変わっているといつも言う。
いくら近くで仕事をすることがあっても、女子社員が惚れるという微笑みを見ても、私には彼の魅力が分からないのだ。
冗談で結婚を口にするような人がいいなんて、あまり感じられないのが変わっているのだとしたら、それで構わないとさえ思える。