溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~


 失恋のためのデートなら、食事をするだけでいい。
 長居すればするだけ、思い出が積もるし。女々しい自分を一層なじりそうだし。


 ドライブが好きなのか、社長室の調度品は自分で選んだものなのか。
 彼女の問いかけが何だか嬉しい。
 今さら俺のことを知ろうとは思っていないだろうけど、やっぱりまだ好きな気持ちがあるうちは、小さなことでも嬉しくなってしまう。


 横浜の街に向かって、愛車を走らせる。
 あの街に漂う異国情緒と、東京とは違うってプライドの高そうなところが好きだ。
 それから、素敵な景色があちこちにあるところも。


 緊張をごまかすために、いつも聴いている曲を流してハンドルを握り、彼女が無言になろうとも反応が冷たくても気にしないことにした。



「運転しながら歌うんですね」

「……え?あ、いま歌ってた?」


 ――俺、どれだけ緊張してるんだ。
 彼女がどうしたら楽しんでくれるか、俺が最後の時間を悔いなく過ごすにはどうしたらいいか。

 そんなことを考えていたら、彼女に笑われてしまった。



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