溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「失礼します」
社長室の書斎に入り、霧吹きのレバーを引いた。椎茸が濡れて、梅雨の晴れ間の陽光にキラキラとしている。
社長は席を外しているらしく、主のいない空間は広さの分だけ静けさが大きい。
「なんかムカつく」
その、なんかの正体は分かっている。
私のプライドが許せないのだ。振られた感が否めず、かと言ってそれに取り合う気もないから、消化不良を起こしているのだろう。
先日、きちんとお断りをした。
だから、彼がどうしようと自由なのは重々分かっている。
だけど、腑に落ちない。半年前から碧さんと交際していたという記事の一文が、引っかかっているから。
――半年前って、どういうこと?私に好きだって迫ったあの空気感は一体なんだったわけ?
「あー、苛々する……」
「椎茸に当たらないでくださいね」
いつの間にか戻っていたらしい社長が、私の背に声をかけた。