溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

「お疲れさまです。椎茸のお世話、終わりましたので失礼します」

「……珍しいですね。白埜さんはあまり感情が波立たないタイプだと思っていましたが」

 街の景色を背景に、淹れたばかりのコーヒーにゆっくりと口をつける社長を見つめる。



 その余裕はどこから生まれるんですか?

 私だったら、少なくとも振られた相手とこんなふうに話せませんけど。失恋の傷って、そんな簡単に癒えるものなんですか?

 ――あぁ、そうか。本気じゃなかったからか。
 碧さんがいたから、私に言った想いはつまみ食い程度だったのだろう。そうだとしたら色々と合点がいく。



「明日出る記事、広報で見せてもらいました」

「そう」

「大変ですね。何かと注目されてしまって」

「雨賀さんとの関係を隠すために、貴女との記事を書かせたのだとしたらどう思いますか?やっぱり、私を嫌いますか?」


 予想だにしなかった問いかけに、思わず目を丸くした。
 社長がそんなことをするような人だとは、少しも考えたことがない。



「構いませんよ、嫌っていただいても。現に、私は振られた身ですから」

 綺麗に弧を描いて微笑む唇が憎たらしい。
 私を見つめるその瞳が、心を見透かしてくるようで気に食わない。


 失礼します、と不愛想に告げて社長室を後にした。


< 98 / 251 >

この作品をシェア

pagetop