溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「お疲れさまです。椎茸のお世話、終わりましたので失礼します」
「……珍しいですね。白埜さんはあまり感情が波立たないタイプだと思っていましたが」
街の景色を背景に、淹れたばかりのコーヒーにゆっくりと口をつける社長を見つめる。
その余裕はどこから生まれるんですか?
私だったら、少なくとも振られた相手とこんなふうに話せませんけど。失恋の傷って、そんな簡単に癒えるものなんですか?
――あぁ、そうか。本気じゃなかったからか。
碧さんがいたから、私に言った想いはつまみ食い程度だったのだろう。そうだとしたら色々と合点がいく。
「明日出る記事、広報で見せてもらいました」
「そう」
「大変ですね。何かと注目されてしまって」
「雨賀さんとの関係を隠すために、貴女との記事を書かせたのだとしたらどう思いますか?やっぱり、私を嫌いますか?」
予想だにしなかった問いかけに、思わず目を丸くした。
社長がそんなことをするような人だとは、少しも考えたことがない。
「構いませんよ、嫌っていただいても。現に、私は振られた身ですから」
綺麗に弧を描いて微笑む唇が憎たらしい。
私を見つめるその瞳が、心を見透かしてくるようで気に食わない。
失礼します、と不愛想に告げて社長室を後にした。