王子、月が綺麗ですね
敵わないと思ったのか、退散していく山賊たちに叔母上が「何だい、もうお終いかい」と一声浴びせた。

俺は背筋に悪寒が走るのを感じ「紅蓮──嫌な予感がする」と言いながら、朱雀の社がある方角を見つめた。

首から下げた勾玉が胸元で熱くなっていた。

凛音は山賊たちが退散していくのを見届けると、俺の元に駆け寄ってきた。

「大丈夫でしたか、お怪我はありませんか」

俺は三節棍を両手で握り、懸命に体を支えていたが、足の感覚はほとんどなく、凛音の声に安心し緊張が解けた途端、脱力した。

「王子!?」

凛音は俺の体を見回し、怪我がないかどうかを念入りに確かめた。

紅蓮が「どう?」と俺の顔を覗きこんだ。

「しょうがねえな」

祥が座り込んだ俺をサッと背負った。

たかが数名、相手にしただけでこのざまか──と情けなくなる。
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